表題:海老坂峠 6巻1章海老坂峠



 春がやってきて、四方平蔵は再び繭の買い付けに綾部へ出てきた。伊助の倉に詣でると、直は待ちかねたように切り出した。「平蔵さん、金神さまが急きなはってなりまへんのじゃがええ。どうぞ表にお出しする方法、考えてみておくれなはれ」「それですがな、わしの悩みも。どうしたら艮の金神さんに表へ出てもらえまっしゃろなあ。なんせ金光さんの看板借りんことには、どうにもなりまへんさかい……」 考えこむ四方平蔵に、直は笑顔を向けた。「昨年の秋頃、東の方から変わったお方が来なはってなあ、艮の金神さんを見判けてやると言うてくれなさったんですわ。